心に残る逸品&食材

 

現在まで出会った印象的なスイーツや心に残る食材をご紹介します。

 

 

 

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2015年

12月

01日

12月の風物詩「アドヴェント・カレンダー」

 

アドヴェント・カレンダー

ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユのショーウインドウ

 

先月、「サロン・デュ・ショコラ・パリ」に出かけた時、1761年創業の老舗菓子店「ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユ À la mère de famille」のショーウインドウに可愛い「アドヴェント・カレンダー Advent calendar」が並んでいるのを見かけました。

 

「あぁ、懐かしいな」と思ったのは、昔「シュトーレン」と「レープクーヘン」の研究のため、ドイツのフランクフルトからロマンティック街道を縦断し、ミュンヘン、ザルツブルク、ウィーンと雪の中を歩きまわった時、ドイツ語圏の多くの街でこの「アドヴェント・カレンダー」に出会ったことを想い出したからです。

 

 

 

 

アドヴェント Advent」は、日本語では「待降節(たいこうせつ)」といいます。

 

11月30日に最も近い日曜日(11月27日〜12月3日の間に該当する日曜日)に始まり、クリスマスイブ(12月24日)まで続く、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことです。

キリスト教国においてはとても大切な期間なのですが、特にドイツ語圏では様々な伝統行事が行われ重要視されています。

たとえば、この期間中には4度の「日曜日(主日)」を迎えますが、第1主日には「アドヴェントリース」に1本のロウソクを灯し、第2主日には2本というように、週を追うごとにロウソクの数を増やしながら家族でクリスマスまでの日々を過ごします。

(主日には家族が集まって薄く切ったシュトーレンを楽しみます)





 

アドヴェント・カレンダー」は、ちょうどこの時期に当たる12月1日12月24(25)日の間だけに使われる特別なカレンダーです。


子供たちは、12月1日から毎日その日の数字が書かれている扉を開いていくのですが、実はこの数字は1から順番に並んでいるわけではありません。

下の写真のように「数字の並んでいる順番」や「扉の大きさ」はバラバラですので、子供たちは毎朝まず今日の数字がどこにあるのかを探し出すことから始めるそうです。

これもまた子供にとって楽しい習慣なのでしょうね。


 

 

ベルニーズ・アルプスの風景を描いたアドヴェント・カレンダー

扉を開くとかわいい絵が描かれています

12月24日の扉            (ars edition社製 )


  

 

 

キリスト誕生までの物語が描かれたアドヴェント・カレンダー

ひとつひとつの扉の裏にキリスト誕生の物語が綴られています

12月25日の扉          (1989年Centurion社製)

 

 

 


お菓子の入ったアドヴェント・カレンダー

これは、昔子どもと一緒に楽しんだアドヴェント・カレンダーですが、ひとつひとつの扉の中にお菓子(チョコレートやキャンディ)が入っているものです。扉を開けるのがますます楽しみになりますね。(Rohen社製)

 

「ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユ」に飾られていた商品も、これと同じタイプのものです。


 

 

 

陶磁器製のアドヴェント・カレンダー

 

これは陶磁器メーカー「ビレロイ&ボッホ Villeroy & Boch 」のアドヴェント・カレンダー。

陶器製のかわいいオーナメントが後ろの「赤い引き出し」の中に入っていて、毎日その日の数字が書かれた引き出しからオーナメントを取り出し、ツリーに飾り付けていくという趣向です。

ひとつひとつのオーナメントがとても美しく精巧に作られていて、とても豪華なアドベント・カレンダーです。

 

 

 

 

ちなみに、市販されているものだけではなく、お母さんの「手作りアドヴェント・カレンダー」もあります。

 

ドイツの本屋さんでは、この時期クリスマス用の「シュトーレン」や「ヘクセンハウス」のレシピ本と一緒に「手作りアドヴェント・カレンダー」の本も並べられています。

 

 『Advents-kalender』( Falken社刊)

 

この本は、なんと「電動丸のこ」や「パラレルクランプ」などセミプロ級の工具まで使う本格的なDIY本です。

(私もドールハウスを作成するので、一応電動丸ノコやクランプは持っていますが)

こんなかわいい手作りのアドヴェント・カレンダーをお母さんに作ってもらえるなんて、子どもは最高に嬉しいでしょうね。

 

 

ところで、ドイツでお世話になった通訳さん(ドイツ人と結婚した日本人女性)の話によると、この時期ドイツの奥様方はクリスマス用のクッキーを山ほど焼いて実家や親戚にプレゼントする習慣があるのだそうです。

私もそのクッキーをいただいたのですが、1個1個がプロ並みに作られていて、クッキーのデザインだけでなく生地の配合まで多彩なのに驚きました。

ドイツではその家に伝わるクリスマスの伝統をとても大切にしてるそうで、それを忠実に受け継いでいくことは、お嫁さんにとって「なかなか大変なことなんですよ」とのことでした。

 

 

 

 

ドイツのクリスマスマーケット

 

ドイツの冬は、夜が長くて寒さが厳しく辛い季節なのですが、アドヴェントの時期になると、教会や市庁舎の前には明るく華やかな「クリスマスマーケット Weihnachtsmarkt」が開かれ、毎晩大勢の家族連れで賑わいます。

(ちょうどお祭りの沿道に賑やかな夜店が並ぶような感じですね)

 

 

 

 

そして、この時期の教会には必ず下の写真のようなキリスト誕生の場面を表す人形が飾られています。

 

クリッペ Krippe」(ドイツ語)「クレーシュ Creche」(フランス語)

 

両親と一緒に教会を訪れた子どもたちは、ここで人形を見ながらキリスト誕生にまつわる様々なお話を聞かせてもらいます。

足元から凍りつくような厳しい寒さの中で、小さな子どもたちが熱心に親の話を聞いているのには本当に感心させられます。


 

 

ところで、アドヴェント・カレンダーの「12月6日」の扉に描かれているこの人は誰でしょう? 


 

実は、12月6日は聖人暦の「セントニコラウスサンタクロース)」の日に当たります。

ですので、ドイツでは「サンタクロース」は12月24日にではなく、12月6日にプレゼントを持って「良い子」のところにやって来ます。

(「悪い子」がどうなるかは分かりますね)

 

そして、24日のクリスマスは「赤ちゃんのイエス様」を待ちながら家族で静かに過ごすそうです。

(我が家も、子どもがカトリック系の学校に通っていたので、クリスマスは荘厳で静かなものという認識です)


 

ドイツのクリスマスは、このように厳かな伝統を守りながら、1月6日の「公現節エピファニー épiphanie」まで静かに続いていきます。