マカロン・サン・ジャン・ド・リュズ
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フランス西部のバスク地方にある小さな美しい港町サン・ジャン・ド・リュズ Saint-Jean-de-Luz
この小さな街に、1660年創業、350年以上という古い歴史を持つ銘店「メゾン・アダム Maison Adam」があります。
その店のスペシャリテが「マカロン・サン・ジャン・ド・リュズ」という素朴なお菓子なのです。
シックな佇まいの「メゾン・アダム」
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17世紀、太陽王ルイ14世の時代、長年戦争を繰り返してきたフランスとスペインは、ピレネー条約によって講和を結び(フランスの勝利)、それによってスペインのフェリペ4世の娘マリー・テレーズ王女が、ルイ14世に嫁ぐこととなります。
1660年6月、その結婚式が行われたのが、スペインとフランス両国の国境近くにあるサン・ジャン・ド・リュズの「サン・ジャン・バティスト教会」というわけです。
その時、お祝いの品として献上されたのが、このメゾン・アダムの「マカロン」でした。
この伝統あるレシピが、今なおこの店で守り続けられているのですね。
店頭に飾られたマカロン
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ショーウインドウには、美味しそうなマカロンがたくさん並べられています。
この写真のように贈答用に美しく箱詰めされた商品もありますが、1個から買えるバラ売りのマカロンもあります。
ですから、子供でも、私たちのような旅行者でも、気軽にこの伝統的なお菓子を味わうことができるというわけです。
噛めば噛むほど口の中にアーモンドの風味が広がって、心の底からほっこりと温かくなるお味です。
伝統あるお菓子が小さな街で大切に守り続けられている、これは本当に素敵なことですよね。
ところで、私たちが普段日本で見かける「マカロン」といえば
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これですね。
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多くの人が、この表面にツヤのあるクリームたっぷりのマカロンを思い浮かべるのではないでしょうか。
このスタイルのマカロンは「マカロン・パリジャン macaron parisien (マカロン・リス macaron lisse)」と呼ばれているものです。
「リス lise」というのは表面がなめらかでツヤのある状態という意味。
20世紀に入ってから、パリの「ラデュレ」で考案されたと伝えられています。
実は、「マカロン」の基本的な配合は、卵白と砂糖とアーモンドパウダーという非常にシンプルな組み合わせでできています。
ですので、フランス各地には、少しずつ配合や味わいの異なる様々なマカロンが存在しているのです。
古くは8世紀に「コルムリー修道院」で発明されたといわれるマカロンや、有名なところではナンシー、サンテミリオン、アミアンなど、歴史、食感、見た目の異なるマカロンがそれぞれの地方の銘菓として愛され、現在も作り続けられています。
フランスの地方を巡りながら、その土地特有のマカロンを味わってみるのも楽しいですね。
また、実は同じお店のマカロンでも、時代の変化や技術の進化やシェフパティシエの交代によって、少しずつ作り方が変わっていることもあります。
例えば、先ほどのラデュレですが、
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これは、十数年前のラデュレのマカロンです。
当時から「パリでマカロンを食べるのならラデュレ」と言われていましたが、現在のお洒落なマカロンと比べると、少し素朴なスタイルでしたし、クリームももう少し重かったように思います。
「こんな濃厚なマカロンは、パリだからこそ受け入れられるんだろうな」と漠然と考えていた私。
つまり当時の私は、日本で現在のようなマカロンブームが起こるとは夢にも思っていなかったのです。
けれども、人の嗜好は時代とともに「変化」します。
またお菓子のスタイルも人の嗜好に合わせて少しずつ「進化」します。
特にパリや東京はそういう街なのかもしれません。
そして、その両者が見事に一致することがあるんだと改めて感心させられるお菓子となりました。
変わらぬものと、進化するもの。
人それぞれにお好みもあるかと思いますが、いろいろな店のマカロンを年代ごとに味わっていくのもまた楽しいものです。
「メゾンアダム」(サン・ジャン・ド・リュズ)
「サン・ジャン・バティスト教会」