魅惑のメキシコ(2) 伝統のカカオドリンクと名物料理編

                     2016年6月

 

トウモロコシをくわえた犬

(プエブラ「アンパロ美術館」の展示物)

 

カカオポッドを持ったサル

 

 

メキシコのわんこもおさるも、可愛いですね。 

 

どちらの像も、先コロンブス期precolombino)メキシコ古代文明の出土品です。

そう、トウモロコシ」も「カカオの栽培も、実はメキシコがルーツなのです。

 

 

そして、これら以外にも、私たちが現在食している様々な食物の中に、中南米原産のものが多いことをご存じでしょうか?

 

サツマイモジャガイモカボチャ、トマトトウガラシインゲン豆アボカドピーナッツなど

すごいですよね!

つまり、これらの食物は、コロンブスがアメリカ大陸に到達する15世紀末まで、この大陸以外には存在しなかっということですから。

 

 

 

 

 

マヤ地域(タバスコ州)のカカオ農園

可憐なカカオの花

カカオポッドを収穫する農園の人

発酵の済んだカカオ豆

 

メキシコは、日本の約5倍もの国土を持つ国ですが、カカオ豆の約8割はユカタン半島の付け根にある「タバスコ州」で生産されています。

 

かつて、このユカタン半島には「マヤ文明」が繁栄しており、タバスコ州はそのマヤ文明の西の端の地域に当ります。

また、そのマヤ文明よりもさらに古い時代、メキシコ湾岸のベラクルス州辺りには「オルメカ文明(紀元前1200年〜紀元前後)」が繁栄しており、タバスコ州はその東の端にも当ります。

 

つまり、オルメカ文明とマヤ文明の重なり合った地域に存在するのがタバスコ州なのです。

カカオ豆はすでにオルメカ文明でも利用されていましたが、マヤ文明でさらに発展したと言われています。そういう意味でも、タバスコ州は大変興味深い位置にあるわけですね。

 

メキシコに行く前、メキシコには他の国にはない未発酵豆の文化があると聞き不思議に思っていたのですが、実際にこの地のカカオ農園を訪れてみて、本当に目から鱗という感じでした。

 

 

タバスコ州


 

 

魅惑のメキシコ(1)「古代ピラミッド」を旅する編」でも少しお話しましたが、メキシコ各地にはかつて独特な文化を持つ素晴らしい古代文明が存在していました。

 

そして、その地域に伝承されている古代からの様々な風習は、現在もなお各地で大切に守られていて、カカオにまつわる飲み物や料理の伝統文化も例外ではありません。

なにしろ、世界で初めてカカオを栽培し利用したオルメカ文明から、四千年近い長い歴史を通して、カカオはメキシコの人々に愛されてきたわけですから。

 

かつて、アステカ文明の王が金のカップに入れた「ショコラトル(トウガラシなどの香辛料を入れたカカオドリンク)」を1日に50杯も飲んでいたことは有名な話ですが、現在でもメキシコ各地には、現在でも少しずつ製法の異なるチョコレートドリンクが存在しています。

 

 

 

たとえば、タバスコ州の各農園では「ポソル Pozol 」というチョコレートドリンクが好んで飲まれています。

 

ポソル Pozol


 

ポソル」は、「ローストしたカカオ豆」と「茹でたコーン」をベースとして作られています。

上の写真のように石製の「メタテとマノ Metate y Mano」などを使ってペースト状にすり潰し、お好みで砂糖、胡椒やシナモンなどを加えて練り合わせ、それを「ヒカラ Jicara」という樹の実の器で濾して作ります。

 

ポソルはスパイシーで比較的サラッとした飲み物なので、高温多湿でストレスの多いタバスコ州では、のどごしの良いドリンクとして好まれているんでしょうね。

 

 

 

一方、標高1550メートルの高原にあるオアハカ Oaxaca は、先住民族の多いとても魅力的な街。

ここでも、大変変わったチョコレートドリンクを味わうことができます。

 

テハテ Tejate


 

この「テハテ Tejate」というチョコレートドリンクは、ローストしたカカオと茹でたトウモロコシを使う点は上記のポソルと同じなのですが、それにカカオの花やマメイの種など珍しい素材が加わり、さらに少し変わった製法で作られています。

 

まず、上の写真のようにペースト状にした素材を力強く練り合わせ、さらに冷水を高い位置から勢いよく注ぎ込みながら泡立てていくのです。

すると、油脂分が白く表面に浮いてホイップクリームのように仕上がります。一見、飲みにくそうに見えるのですが、泡の下の液体部分が想像以上にあっさりしているので、私は飲みやすく感じました。

このドリンクはカロリーも結構あり、朝1杯飲めば半日元気いっぱい働けるそうです。

 

 

 

 

なお、オアハカのチョコレート屋さんに行くと、オーソドックスなチョコレートドリンクのもと(温めたミルクに溶かす既成の製品)を売っていますが、オーダーすれば、自分の好みで材料の比率(カカオ豆、砂糖、香辛料の比率)を作ってもらうこともできます。

 

Chocolate MAYORDOMO

 

こんな風に、計量したカカオ豆、砂糖、シナモン、アーモンドなどをグラインダーにかけてペースト状にすり潰してくれるのです。

少し砂糖を少なめにとか、スパイスを多めにとか、お好みのチョコレートドリンクがオーダーできるわけです。

写真の「Chocolate MAYORDOMO」さんは、オアハカ市内にいくつもの支店を持つ有名店です。

 

 

 

 

最後に、チョコレートを使った名物料理を紹介しましょう。

メキシコシティの南東にある古都プエブラで生まれた料理です。

 

モレ・ポブラーノ Mole poblano

 

「モレ・ポブラーノ」は、プエブラの「サンタロサ修道院(現プエブラ民族芸術博物館)」で1680年頃に生まれた料理といわれています。

 

プエブラ市内で寄ったお店では、写真にあるような様々な材料を使っていました。

チョコレート、ゴマ、アーモンド、トマト、トウガラシ、シナモン、クローブ、バナナ、ビスケットなどです。

メキシコではお店によってそれぞれ秘伝の配合があるようですね。

このお店のモレは、ねっとりとコクのあるお味でした。

 

 

メキシコでの2週間の旅が終わってまず思ったことは、絶対にもう一度この国に来たいということ。

 

知れば知るほどもっと知りたくなる魅惑の国、それがメキシコです!

 

 

 

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「メキシコ」については

 

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オアハカ Oaxaca de Juárez

 

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